メイドインジャパン

 先々週から3週にわたって放送されたNHKメイドインジャパン」。とても興味深いテーマであり,ストーリーでした。高度経済成長以来の日本経済を支えた業種の一つ・電気機械・器具製造・販売業がアジア諸国等の台頭に伴って次第に競争力を失い,会社の立て直しを模索する物語。現在の日本経済を象徴するようなテーマおよびストーリーでした。
 第1回では,日本企業タクミは,圧倒的な生産力と低コストを強みとする中国企業に契約を奪われようとします。第2回では,タクミは技術を盗んだ疑いで中国企業から技術料を払ってもらおうとしますが交渉に失敗し,その中国企業を法的に訴えることに。一方でドイツ企業との提携も模索...。第3回では,一転,タクミを退社して中国企業に移籍した技術者の記者会見を機に,タクミと中国企業が,信用と技術力,生産性と市場というそれぞれの強みを活かして提携を進めることに。日本企業のおかれた現状を浮き彫りにした第1回と第2回に比べて,第3回は今後の日本経済,グローバル経済への期待を込めた内容だったように思いますが...。唐沢寿明高橋克明,大塚寧々,岸部一徳など,個性ある俳優陣の演技も良かったですね。
 http://www.nhk.or.jp/drama/madeinjapan/
 このドラマで感じたことはいくつもありますが,その中で「技術」と「希望」に着目したいと思います。「技術」については,高橋克実が演じた,タクミから中国企業に移籍した技術者が記者会見で言った「私は技術に対して嘘はついていない」「技術は誰が開発したかというよりも誰の役に立つかだ」「技術は社会を大きく前進させる力を持つが,同時にリスクもあり,それに対応していく必要がある」という台詞(本当の台詞はたぶん少々違っていると思います)が印象に残っています。いずれも技術者の哲学・倫理を示しているように思います(ドラマでは理系の技術に焦点が当たりましたが,社会変革の技術もこれに含めてよいと思います)。研究者としての哲学・倫理にも共通するなと思いました。また,二番目に挙げた台詞については,イノベーション,創造性,知的財産権が重視され,それが国や地域の競争力の源泉として見直されている中で,これをどう捉え,位置づけ,折り合いをつけていくか,ということを考えさせられました。
 もう一つは「希望」。ドラマ中の架空企業タクミの社歌のタイトルでもあり,岸部一徳が演じたタクミ創業者,そしてタクミの新たなステージを見いだそうとする唐沢寿明が演じる主人公が発した言葉です。個人にとっての希望,会社としての希望,国としての希望,地球社会の希望...。さまざまなレベルの希望があると思いますが,いずれの場合も希望がともるのは一人ひとりの心の中かな...。希望がみんなの心にともるような家庭,会社,地域,国をつくることは大事だなあ,と改めて考えました。閉塞感がただよう今の日本だからこそ...。職業柄,若い人たちが希望を持てるような仕事に励まなければね。
 「メイドインジャパン」は,「白い巨塔」「仁ーJinー」などに続いて,私が久しぶりに「見たい」「面白かった」と感じたドラマでした。こんなドラマがどんどん作られてほしいなあ。