相互作用の舞台演出(5)

再び「創発まちづくり」のボツ原稿の続きです。

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居心地のよい「場」をつくる
 参加者の想いや能力に敬意を払うだけで,そこに何の仕掛けも工夫もなければ,相互作用が効果的に展開されることはない,松波の言葉を借りれば,「放し飼いにしておくと,何も始まらないしね。」ということになる。そこに必要なのは,創発させるための手法であり,その第一歩が相互作用の場をつくる手法ということになる。そこで,まず考えるべきなのはどのような性格を持った場をつくるかということである。これについては,執筆者たちはそれぞれの事例のなかで次のような考え方を示している。
 ●牛来:私が場づくりにおいて留意しているのは「人肌の感覚」である。その場が人肌で感じられる温度で保たれていることが大事だと思う。冷たくても熱くても集まることができない。
 ●吉原:そういう「やりたい人はやりたいことをやったらいいんだよ」という場,ただし,せめて情報だけは共有しておきましょうね,究極的な目標が一緒だったらこの輪の中に入ってきてくださいね,という場をつくる。
 ●和田:共同学習は,広域的なまちづくりを進める上で特に重要だと感じている。広域でやろうと思えば思うほど,地域的条件や人々の思いは違うわけで,その中である程度同じ方向を向きながら,何かやっていこうと思うと,ある程度の共通認識を持つ必要がある。
 3人の発言に共通するのは,参加者にとっての必然性を活かす,ということであろう。そのために,人が集まりやすい温度が保たれていたり,場への出入りが自由であったり,情報や認識の共有化が図られていたり,学習を通じて個々の参加者やグループ全体が高まるといった工夫が行われているのである。これらは,参加者の想いや能力を活かすために,「居心地のよい場」をつくっているとみることもできよう。
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