相互作用の舞台演出(10)

このシリーズも第10回となりました。まだ続きます。今日も「活動により多くの人を巻き込むための工夫について」です。

                          • -

 他者への働きかけについては,住民やSOHO,学生などまちづくりの主体となる立場の人々を対象とするだけでなく,その活動をさらに強固なものにしていくため,行政の職員あるいは組織を対象とすることも必要である。
 ●重徳:一時期,住民参加型行政が言われたが,それはあくまで行政主導の考え方である。これからは公務員参加型NPOが必要な時代だと思う。
 ●松波:住民参加型行政というよりも,行政参加型のまちづくりの必要性を言う人もいる。そういう人たちは,住民が主体となったまちづくりに行政も参加させてやっているんだという意気込みで取り組んでいる。
 ●吉原:創発的な場をつくろうと思うと,行政を口説くことが必要になる。行政職員に「プランニングするのでなく,動かしていきましょう」という合意を得て,場づくりに取り組むことが必要だ。
 重徳や松波の意見は,行政が住民を巻き込むのでなく,住民が行政を巻き込む必要があるという点で一致している。その際,吉原が言うように,計画や制度を重視しがちな行政職員に対して,何らかの活動を誘発させることが目的であることを理解してもらうことが大切である。行政職員に参加してもらっても,行政の論理に振り回され,場の居心地が悪くなるようでは,参加してもらっても逆効果である。例えば,私が広島県K市で山を活かしたまちづくりを行うに当たり,住民らとともに住民組織を立ち上げ,行政と連携しながら活動を展開したことがあった。しかし,連携先の行政組織は非常に官僚的で,住民組織で話し合って実行しようと決めたことでも,行政が支援するための決裁に長い時間を要したり,上司の鶴の一声で決定事項が変更される状況がたびたびみられた。そのため,行政組織は住民主体のまちづくりとして自画自賛するものの,住民らは次第に意欲を失い,活動は停滞するようになった。
 また,より多くの人に働きかけを行い,具体的な活動を誘発する手段の一つとして,積極的に情報を発信していくことも大切である。
 ●重徳:情報公開の必要性が言われているが,情報を提供するに当たって,よりわかりやすい情報の提供方法を検討し,実践しなければいけない。財政事情についても,総額を示すだけでなく,住民一人ひとりの財布で考えると,いくらが借金で,いくらが体育館の管理費だということを示していかないといけない。
 重徳の話は行政の立場からみたものであるが,これは住民主体のまちづくりにおいても当てはまる考え方だろう。一人ひとりが自らの問題として実感できる情報をわかりやすく提供することによって,問題に対する関心を高め,自らの問題として議論しあい,具体的な活動を誘発していくことが期待される。

                                        • -

「広島ブログ」参加中!この記事が面白ければクリックしてください→広島ブログ