大学院で研究発表

昨日は広島大学大学院のゼミで半期に一度の自分の研究発表の日でした。先週ぐらいから先行研究調査のスピードアップを図り,何とか前日夕方に資料をとりまとめることができました。本日から何日かに分けて,その発表資料のうち,先行研究の調査内容(現段階のもの,中間整理)をご紹介していきたいと思います。

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 情報通信技術の発展とその普及に伴う社会経済的な変化については,経済学や社会学における研究成果を受けつつ,地理学では1980年代後半になって,それらを扱う研究がみられるようになった。Harvey(1989)の「時間と空間の圧縮」やCastells(1989)の「情報発展モード」などには,社会・経済システムを変化させる原動力としての情報あるいは情報通信技術が意識されている。
 しかし,情報を扱う地理学的研究は,情報通信技術が急速に発展した1960年代以前から行われてきた。人間を情報を運搬するキャリアーとしてみなし,対面接触を通じた情報の伝達,交換,共有に着目したコンタクトシステムに関する研究(たとえば,Tornqvist,1970:荒井,1997)や,都市間の結合関係を示す指標として電話やテレックスなどの通信量に着目し,定量的分析を通じて都市間の結合関係や都市勢力圏を見いだそうとした研究(たとえば,稲永,1959:1963:1968,森川,1961:1978,阿部,1977)がみられる。これらのうち,前者の研究については情報の質にも着目していることに特徴があり,後者の研究については中心地理論をベースとして都市間の支配従属関係を描き出そうとした点に特徴がある。これらの研究成果はメディア研究やコミュニケーション研究に受け継がれ,たとえば山田(1986)は,稲永や森川らの研究成果を整理して地理学におけるメディア研究が「前史」段階にあるとした上で,「情報の地理学」の構築に向け,メディア研究を充実させていくことが課題であるとした。また山田(1995,2001)は,メディア(とくに通信メディア)を介したコミュニケーションが従来「地域」という視点を捨象してきたと批判し,全体社会に対する部分的社会のコミュニケーションとして「地域のコミュニケーション」という視点を提起するとともに,情報化の進行は地域社会に新しいコミュニケーションの回路をつくり,新たな情報の流れをもたらすが,それは従来の地域社会の枠組みをなぞりながらも,その内部構造に変革をもたらすとした。
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