情報地理の研究動向(2)

先週に続いて、情報地理に関する研究のレビューです。今日は2回目。

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1960年代以降の情報通信技術の発展とその普及にともない,HarveyやCastellsの指摘を踏まえつつ,情報化と都市・地域に関わる研究がみられるようになってきた。一つは情報通信技術の発展に伴って成立したバーチャル社会に関する研究であり,もう一つは情報化に伴う都市・地域の変容に関する研究である。前者は情報通信技術の発展に伴って新たに誕生したバーチャルな社会や都市について,その特徴や可能性を論じるものであり,リアルスペースに存在する従来のコミュニティと対比させる形で,「地図にないコミュニティ」「バーチャル・コミュニティ」「ネットワークコミュニティ」「シティ・オブ・ビット」など,数多くのメタファーが提唱された。これらの研究において強調されたのは,情報通信技術は空間的な距離を克服して瞬時に情報を移動,共有させることができるため,それまでコミュニティの成立要件の一つとされた地理的なまとまりを必ずしも必要としなくなったという点である。一方,後者に関しては,わが国では北村・寺坂・冨田(1989)がその代表的な研究例であり,日本地理学会における活動成果も踏まえて,「情報地理学」の概念を提起するとともに,情報産業の立地と産業の情報化,情報化と地域社会,情報流と中枢管理機能という観点から,情報化に伴う地域構造の変容が考察された。またGraham and Marvin(1996)は,情報化と都市をめぐる様々な技術決定論的あるいはユートピア的な議論とは距離を置きながら,「情報化が都市に何をもたらすか」という疑問に対して,?経済のリストラクチャリング,?都市社会と都市文化の変容,?都市環境,?公共交通とライフライン,?都市の物的形態,?都市の計画・政策・管理という6つの視点から分析した。
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