情報地理の研究動向(3)

昨日に続いて、情報地理に関する研究のレビューです。今日は3回目。

                • -

 これらの研究を受け,情報通信技術の発展と普及に伴う都市空間と産業空間の変容,さらに社会的ネットワークの変化に関する具体的かつ実証的な研究がみられるようになってきた。都市空間の再編については,Graham and Marvin(1986)が都市は従来の地理的・社会的な統合体としてだけでなくテーマや分野に応じて世界とつながったノードの集合体として再構築されると指摘したこと,Castells(1996)が従来の「場所の空間」に加えて情報通信技術によって支えられる「フローの空間」が成立しているという指摘に代表されるように,都市は物理的空間だけでなく,電子的空間がそれに重なり合う形で成立することが認識されるようになった。田村(2000)が指摘した空間的情報流の存在と経済活動に関する「第2の空間」の誕生もこれらの議論に沿うものであろう。さらにGraham(1997)は,情報通信技術と現実空間の関わりについて,?情報通信技術による現実空間の代替・圧倒,?情報通信技術と現実空間の共変化,?情報通信技術と現実空間の再結合という3つの視点を提示した上で,?の視点は技術決定論的かつユートピア的な議論であると批判し,?および?の視点を重視すべきだとした。また,情報通信技術によって構築されるコミュニケーションの空間は,現実空間における空間および場所の概念をそのまま適用するのでなく,アクター同士や様々な技術との結合関係の中で場所や空間を位置づけるべきであるとした。
 産業空間の再編については,箸本(2000)が整理しているように,多数の研究蓄積がある。特にわが国においては,社会・文化分野における情報化が経済・産業分野のそれと比べていちじるしく遅れていたこともあり(Aoyama,2001),情報通信技術の発展と普及に伴う生産活動や営業活動,流通システム,企業組織などの変容に関する研究,情報通信産業の立地や労働力に関する研究などが数多く行われてきた。その契機となったのが経済地理学会2000年大会のシンポジウム「産業空間および生活空間の再編と交通・通信・情報」であったといえる。
広島ブログ