中国圏広域地方計画へ提案

私の授業「地域計画」からスタートした新しい国土計画「国土形成計画」の中国地方版・「中国圏広域地方計画」への徳山大学学生からの意見募集と国土交通省への提案。6月中旬からスタートしたこの取組みですが,先週12日に国土交通省中国地方整備局に学生3名とともに意見を持参し,提案してきました。これで一区切り。学内選考による受賞者は3名ですが,応募があった27名の意見を要約すると,次のとおりです。少し長いですが,以下,ご参考まで。

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 本事業で徳山大学の学生から提出された意見書は27件であった。学年は1年から4年まで全学年,所属学部および学科も全学部・学科に及んだ。なお,提出者のうち,授業「地域計画」履修者は12名であった。
 提言内容を分野別にみると,「観光」が8件(全提言の29.6%),「文化」が4件(同14.3%),「スポーツ」が3件(同10.7%),「情報」が3件(同10.7%),「環境」が3件(同10.7%),「国際交流」が2件(同7.1%)などで多い。これらはいずれも,ハード優先あるいは経済重視による地域発展でなく,既存の地域資源を活用しながら,それにソフト面からの付加価値をつけることにより,地域の魅力を増大させ,情報を発信していくことにより,人の移動を活発にすることがその通底にあるとみることができる。ただし,これを実現するために,多くの学生が交通網の整備充実が不可欠と記述しており,山陰地方を中心とした交通基盤整備を進展させることにより,地域内の円滑かつ短時間での移動を可能にすることが期待されている。
 提言件数が最も多かった「観光」については,中国地方に独自の地域資源を発掘・活用していくことの重要性が多く指摘されている。具体的には,原爆ドーム厳島神社石見銀山という3つの世界遺産の連携・活用,多様な自然・歴史資源に着目したスローツーリズムの推進,漫画・アニメ資源に着目したコンテンツツーリズムの推進,多様な食資源に着目したグルメ観光の推進などがあげられた。また,これらを強力に推進するためには,交通網の整備充実とともに,県境を越えた広域的な対応も必要であるという指摘もあった。
 「文化」と「スポーツ」については,前者は主に本学知財開発コース,後者は主にスポーツマネジメントコースの学生から提言されたものである。「文化」に関する提言の多くは中国地方の多様な歴史・文化資源の活用を指摘するもので,歴史街道の掘り起こしとそれを活用した観光交流といった具体的な提案もあった。また,中国地方の歴史・文化資源を漫画・アニメといったコンテンツを通じて掘り起こし,情報を発信していくことにより,地域に根ざしたコンテンツ産業を振興させるといった,知財開発コースならではの提言もみられた。「スポーツ」については,四国アイランドリーグを参考とした地域リーグの開設,野球やサッカーを中心とするプロスポーツの振興とそれを活用した観光振興などが提言された。
 「情報」については,宮崎県の東国原知事による特産品PRを例に出しながら,中国地方の多様な観光資源や特産品の情報をより積極的にPRすべきだという意見が多かった。その際,中国地方が一体となった地域ブランドの確立が重要であるとの意見もあり,その確立・発信に当たり,中国地方の「神秘性」「多様性」を打ち出すとともに,キャラクターを効果的に活用することが提言された。
 「環境」については,中国地方の多彩な自然環境を保全していく活動や水素エンジン車の開発・利用促進による地球温暖化対策事業などが提言された。「国際交流」は中国および韓国からの留学生による提言であり,東アジア諸国との産業・観光面での連携強化が指摘された。
 上記のほか,人口減少時代を迎え,住民一人ひとりの能力を最大限発揮・活用する観点から,人材育成(教育)の重要性を指摘する提言や,食糧自給率を高める必要から,中国地方が一体となって農業を振興させる必要性を指摘する提言,他地域への人口流出を防止するため,ダム効果を発揮する中心都市の育成を求める提言などがみられた。