相互作用の舞台演出(1)

昨日書いたように,コメントの整理に時間がかかりそうなので,その間,昨年出版した「創発まちづくり」に関して,一旦書いたものの編集段階でボツになった原稿を紹介していきます。7人の活動を踏まえ,著者が「創発まちづくり」について語り合ったものです。今日から何回かに分けて紹介します。

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 本章は,第2章から第8章までの紹介事例を踏まえ,「創発まちづくり」に向けた「相互作用の舞台演出」の考え方や具体的方法について考察する。本章は,事例執筆後に7人の執筆者が集まって,「創発まちづくり」「相互作用の舞台演出」をテーマに語り合った内容について,和田が編集してとりまとめたものである。その際,話し合いにおける各執筆者の発言を随所に引用し,各執筆者の思いができるだけストレートに伝わるようにした。また,その話し合いには,私たちにとって広島のまちづくりの先輩である都市計画家松波氏に加わってもらった。
 松波氏は広島に住み,広島のまちづくりに取り組む都市計画家であり,私たちのよき先輩であり,よき理解者である。「創発まちづくり」をテーマとした本書の出版を企画立案する段階から,私たちの相談に乗っていただき,多くの有益なアドバイスをいただいた。私(和田)が本書のテーマについて相談したとき,松波はその意義や必要性について,次のように語ってくれた。
 松波−「創発」という言葉を使ったまちづくりを論じることはある意味とても画期的だと思う。「創発」とは複雑系の用語であり,私は以前からその概念に共感していた。私自身,まちづくりに関わる過程で,若い時は法律や制度などに手を加えてよい仕組みをつくれば世の中がよくなると考えていた。しかし,いろいろな現実を知ると,その考え方が打ちひしがれる。世の中にはものすごく多様性があって,どうすれば誰が幸せになるかということなど誰もわからない。では,どうすればいいのだろう。プランニングと言っても何をすればいいのかと考えてしまう。こういう話を東京の仲間としてもなかなか通じない。しかし,地方でこの話をすると通じるところがある。
 松波は,プランやシステムの必要性を認めながらも,まちづくりの現場にみられる多様性に現実的に対応するには「創発」の考え方が有効だとするとともに,それを意識し,実践するには「中央」でなく「地方」にいることが有利であるとみている。また,この言葉にはデータや既存の政策体系を重視し,行政に対する情報提供を主眼とした従来のまちづくりコンサルタントとは異なる立場や方法の可能性を読みとることができる。
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