相互作用の舞台演出(2)

昨日の続きです。

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 それでは,「創発まちづくり」とは何か。本書では,異なる価値観や能力を持つ「ひと」(あるいは異なる個性を持つ「まち」)が,相互作用を通じて刺激しあい,新しい価値観やアイデア,相互関係を「創」造するとともに,具体的活動を誘「発」していくようなまちづくりと定義しているが,松波はこれを砂粒と砂丘の関係に例えて説明している。
 松波−砂粒一つをみても,それぞれに個性的な形があって,一粒一粒が周りとの力関係で自分の挙動をどう決めようか,自分の行く末はどうなれば一番いいのか考えている。そういう砂粒が何億粒も集まって一つの砂丘になると,それぞれの砂粒を律する原理をあてはめただけでは全く説明がつかない砂丘としての運動が起こってくる。まちづくりは砂粒と砂丘の関係と同じような側面がある。みんながやりたいこと,あるいはそれぞれが持っている能力を集めてみたらどうなるか,そうした新しい力を引き出す方法論を僕らは求めているのだ。
 ここでいう「新しい力を引き出す方法論」が本章のテーマである「相互作用の舞台演出」の方法論に当たることになるだろう。また,松波は「新しい力を引き出す」ために,プランやシステムを通じて上からものを見るのでなく,「もっと現実の前にひれ伏せばいいんだ!」と言う。この考え方は,「はじめに」で紹介したジェイコブス女史の主張「現実をそのまま直視することによって引き出される現実の姿を少しずつ集積し,採用し,試す」に通じるものである。

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