相互作用の舞台演出(17)

今日は創発まちづくりを支える行政のあり方について。

            • -

 住民主体の「創発まちづくり」とそれに向けた「相互作用の舞台演出」を進めるに当たって,行政の職員や組織はどのような考えを持ち,どのような工夫をしながら,これに関わっていけばよいか考えていくことにする。
 ●増田:面白い活動には必ず行政職員の顔が見える。公務だったり,仕事とは無関係の市民としてだったりと立場はさまざま。実行委員会組織の立ち上げ,文書作り,透明な会計処理など行政職員が普通に持つスキルは,市民活動の不得意分野と実はかなり重なっている。OB,OGも含め,活躍の場がかなりあるような気がする。
 増田が言うように,創発まちづくりが実効化するための要素として,行政職員の考え方や活動への実際の関わり方は大きなウエイトを占める。上述したK市のように,ひどく官僚的で「創発まちづくり」を停滞させるようなケースもある。これは行政職員一人ひとりの意識や行動に起因するとともに,行政組織の風土や仕組みに起因することも多い。そうした実状について,重徳は次のように話した。
 ●重徳:行政内部にいると,融通がきかない場面がたくさんある。行政職員も自分の意思をもっと表明していけば,周囲から共鳴してもらうことも多いはずだ。しかし,立場を与えられると,その立場からしか発言できなくなる。
 ●重徳:組織の陰に隠れて自分たちが表に出ないことに安住しているわけだ。しかし,意識の高い行政職員にとってはそういう殻を破れないことが大きな苦痛となり,羽を伸ばしきれない状況になっている。
 確かに,私自身の経験でも,行政職員の方々は一人ひとりと話してみると,まちづくりに関して共感し合えることも多いのだが,その人が行政組織の一員となると,途端に組織内外の立場や上司の目を気にして身動きがとれなくなっているケースが多くみられる。このことは行政内部の風土がもたらす弊害であると言えるが,私は近年の行政評価,特に外部監査の充実がそれを加速している側面もあるように思う。行政評価や外部監査は官と民が一緒になって行政の透明化,適正化を促進する有効な手段の一つであると言えるが,その本質を忘れて行政に対する評価や監査そのものが目的になってしまうと,行政職員の自由をさらに奪い,柔軟で融通のきく行政運営を阻害してしまう危険がある。