アニメーション・今年のまとめ1

夏頃から随時お伝えしてきた「ポール・イマージュ・広島」のアニメーション・プロジェクト。今般,社団法人中国地方総合研究センターが発行する季刊誌「季刊中国総研」2006年第4号に「アニメーションを核とした産業育成と集客交流の試み」と題して拙稿を掲載していただくことになりました。本日からその原稿を紹介していきます。

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1 はじめに〜創造都市とアニメーション〜
 佐々木(2001)は「創造都市」を「産業と文化の創造性に富み,“創造の場”において多様な市民活動が展開される都市」と定義し,芸術・文化の持つ創造性や内発性がその鍵になるとみている 。また,金沢の取組みを「文化的集積を生かした都市の文化的生産」,横浜の取組みを「創造界隈形成と映像文化都市への取組み」として紹介している。金沢は伝統工芸等,横浜は現代アート等の持つ創造性に着目しているが,本稿で紹介する広島の事例はアニメーションの持つ創造性に着目した取組みである。
 アニメーション(Animation)は,「魂を入れる」「活気づける」という意味を持つラテン語の「アニマ(Anima)」を語源としている。すなわち,アニメーション(Animation)とは,それ自体では動くはずのない平面の絵画を映像装置を使うことによって動いたように見せ,絵に魂を入れ,絵を生き生きさせるという意味を持っている。元々バラバラの絵であるアニメーションが動いているように見える理由として次の2つがある。一つは人間の生理的な体の働きである「残像」現象である。バラバラの絵を連続してみると,一つ前の絵が少しずつ目の中に残って見えるため,それがつながって見えることになる。もう一つは見る人の想像力である。異なる2枚の絵と絵の間を見る人が想像しているのであり,見る人の想像力が絵を動かしているということができる。つまり,アニメーションは作る人も見る人も想像力(=創造性)を要求され,それに着目・活用すれば,他の芸術・文化活動以上に創造性を発揮する可能性があると考えられる 。
 なお本稿では,「アニメ」という用語を使用せず,「アニメーション」という用語を使用している。2つの用語には明確な区別があるわけではないが,アニメーション関係者の間では一般的に前者は商業的なもの,後者は芸術的なものという見方がされている。また,アニメーション作家の山村浩二氏は一人の作家の気持ちや個性がより強く表現されたものを「アニメーション」,それらがあまり感じられないものを「アニメ」と呼ぶことを提案している。こうした通用や解釈も考慮し,また「創造性」「芸術・文化」の観点から,本稿では特に断らないかぎり「アニメーション」の概念及び用語を使用する。