アニメーション・今年のまとめ3

昨日の続きです。

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(3) ポール・イマージュ・広島
 このように広島市では,世界4大アニメーション映画祭の一つといわれるフェスティバルと,アニメーションを活かした都市興し・産業興しをめざすビエンナーレが隔年で開催されており,前者は芸術・文化活動の振興,後者は集客交流の促進において一定の成果をあげている。これらは広島市および広島市民にとって大きな財産であり,これらを継続・発展させていくことは「広島の創造都心」を具体化するためにも欠くことのできないものといえよう。しかし,これらの既存イベントは,採算性の向上とそれにもとづく持続性の確保というイベントそのものが抱える課題に加え,イベントの開催効果と地域経済への波及効果をさらに高めるため,広島市民や中小企業の参加と連携,通年にわたる集客交流の促進,アニメーション産業および関連ビジネスの創出の3点が課題となっている。
 これらの課題を解決するため,ビエンナーレ基金とHabyクラブ,広島市立大学 は2005年4月,任意団体「ポール・イマージュ・広島 」を設立した。「ポール・イマージュ(Pole Image)」はフランス語の「映像の中心」を表しており,アニメーション等映像コンテンツを活用することで,広島における関連産業の育成と国内外からの集客交流の促進を活動の目的としている。2005年4月の設立後,2005年8月に4団体,2006年4月に17団体へと参加団体が増え,活動の環は着実に広がりをみせてきた。
 「ポール・イマージュ・広島」は2005年度,経済産業省の支援 を受け,アニメーションを活用した産業育成及び集客交流のあり方を検討する調査事業を実施した。この調査では,国内外の先進事例調査や広島市民の意識調査,フェスティバルやビエンナーレの関係者,さらにSOHO関係者や市民団体等による検討会議 を通じて,集客交流サービス事業の理念・方針およびビジネス展開の可能性が検討された。その結果,検討会議の参加団体を巻き込んだ協力体制が合意されるとともに,各団体からの自発的な提案を受け,3つの課題解決に向けた事業内容を立案することができた。筆者はこの検討会議の進行役を務めたが,会議運営に当たり「創発」を中心概念として設定した。「創発」は複雑系科学から生まれた概念であり,「局所的な相互作用を持つ,もしくは自律的な要素が多数集まることによって,その総和とは質的に異なる高度で複雑な秩序やシステムが生じる現象」と定義されている 。これを少しやわらかく言えば,自分で動くことができる個やその小さなつながりがたくさん集まることによって,足し算で得られる結果とは違ったり,もっと大きな成果を生み出したり,引き起こしたりすることということになろう 。つまり筆者は,検討会議の参加団体を自律した個と位置づけ,その主体的な企画と相互交流を通じて,新たな事業アイデアと具体的行動を引き出すためのファシリテーションに努めた。