アニメーション・今年のまとめ8

昨日の続きです。そして今日でこのシリーズは最終回です。ご感想,ご意見をお聞かせ下さい。

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4 おわりに〜創造都市と創発都市〜
 HACはアニメーションやSOHO,クリエイターに関わる「場」として構想および計画された。そして,社会実験を通じて,そこに関わり,人と人の相互作用を促す「人」の存在が重要であることが明らかとなった。アニメーション作家のうるまでるび の言葉を引用すれば,「兄貴」が必要ということがわかった。すなわち,アニメーションなどのコンテンツビジネスの発展に向けた明確なビジョンを持ち,そこに関わる人々を先導したり,相互作用を仕掛けたり,支えたりできるような「プロデューサー」が必要なのである。「プロデューサー」がいない「場」は単なる空間にすぎないし,拠点となる「場」があれば「プロデューサー」の力が発揮されやすくなるだろう。筆者は調査・実証段階にあたる2005年度と2006年度に相互作用を仕掛ける「ファシリテーター」としての役割を意識してきたが,今後は「プロデューサー」としての役割を果たせる人材を配置することがHACの具体化および実効化に不可欠だと考えられる。
 すなわち,HAC社会実験を通じて,広島の創造都心の具体化には「プロデューサー」と「場」を配置することが不可欠だとわかった。「プロデューサー」が仕掛役となり,「場」において,そこに関わる人々の多様な相互作用を引き起こし,アニメーションをはじめとする多様なコンテンツを活かした新しい価値やアイデア,商品,サービス,対人関係を生み出し,産業育成や集客交流の活性化につなげていくことが必要である。そのためには,創造都市の基本要素とされる芸術・文化の創造性だけでなく,芸術・文化活動やまちづくり,中心市街地活性化,新規ビジネス等に関わるすべての人々が持つ自律的なアイデアと行動,資金を相互作用を通じて化学変化させ,新たなアイデアや行動を誘発させる仕掛けが必要である。それによって,創造都市というよりも創発都市ともいうべき性格を持った都心づくりに繋がると考えられる。こうした営みを通じて,地域(都心)としての学習が積み重ねられ,地域(都心)自体が進化していくことが期待される。すなわち,創造都市から創発都市への拡充を通じて,広島の都心は学習する都市,進化する都市へと“進化”することになろう。