情報地理の研究動向(6)

情報地理の研究動向。本日が最終回です。

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これらの研究成果を踏まえる形で,Kitchin(1998)が提唱したのが「サイバースペースの地理学」である。Kitchinは,デジタルデータがコンピュータネットワークで結びつけられたネットワーク空間がサイバースペースであると定義した上で,それは身体の制約から離れた新しい社会的空間であり,人々が相互に作用しあうことによって,現実空間とは異なるバーチャルな空間性が生み出されるとした。またKitchinは,地理学において最初に『サイバースペース』と題された著作において,現実の社会経済における情報化の現象とネットワークの中にバーチャルに形成された抽象世界の2つの観点が必要であるとした。なお,1998年にはフランスを中心とする情報地理学の専門誌「NETCOM」において「地理的空間とサイバースペース(Geospace and Cyberspace)」というテーマの特集が組まれている。Kitchinが提唱したサイバースペースは,バーチャルであるとはいえ,広がりや位置関係を持つことから,それに関する空間分析も行われるようになった。たとえば,現実の地理的空間の中でのドメインの登録住所の分布(Zook,2000)やバックボーン(情報通信基盤)の整備状況(Malecki and Gorman,2001),ウェブサイトへのアクセス状況(Murnion,2000)などを分析する研究とともに,サイバースペース上のバーチャルな空間性を地図に凝縮して表現しようという試み(Dodge and Kitchin,2001)がみられる。
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